小さな成功体験を積んで、人生の糧に

小さな成功体験を積んで、人生の糧に

びーんずメイトVol.44
松平こどもサークル・かのこ
安藤さち子さん

小学生のためのフリースクールとして
2021年に愛知県豊田市松平地区で生まれた
「松平こどもサークル・かのこ」。

社会福祉士、作業療法士、
元教員、看護師などの
専門性を持った多彩なスタッフと共に、
自然豊かな里山で子どもたちの学びと
探求の場を開いています。

代表の安藤さち子さんに
お話をうかがいました。

今年の年間テーマは「森の学び」。里山の自然の中で探究を進める。

――安藤さんが松平こどもサークル・かのこを始めたきっかけを教えてください。

私の長男が小学生のとき「学校に行きたくない」という時期があって。当時立ち上がったばかりの安城の「おおきな木」というフリースクールを息子と見に行ったときに「あ、私これやろう」と思ったんです。

子どもの自治がある――子どもたち自身で考えていろんなことが進んでいく様子を見て、こうあってほしい、これが自然だなと。それに代表の方が肩肘張らずにやっている感じもとてもよくて。

「よし、私も松平でやるぞ!」と思ってすぐ立ち上げたんです。別に長男の居場所をつくりたかったわけではないんです。長男が来ようが来まいがやるという。もともと松平の自然豊かなフィールドを活かして子どもたちのために何かしたいと思っていたので。

興味のままに深めていく

最初にイエナプラン(※)的なイメージはあったんです。でもそれを打ち出すよりは子どもたちの興味関心に沿うようにしようと。

※ドイツで始まりオランダで広がった、一人ひとりを尊重しながら自律と共生を学ぶオープンモデルの教育。

3年前からはテーマ学習を始めました。「森」、「水」、「土」と毎年テーマを変えて三年で一巡する形です。「水」がテーマだった年は近くの矢作川を源流から河口までたどったり、発電実験をしたり、川で釣りをしてみたり。川の生き物の解剖もしました。

ダムの見学で迫力ある放水に遭遇。「どこでも、何からでも、誰からでも学ぶことはできると思ってます」と安藤さん。

いわゆる探求学習ともちょっと違うというか、「探求させよう」じゃない感じの探求です(笑)。

――「探究させよう」じゃない感じ?

スタッフが面白そうだと思うことと、子どもたちの声とをあわせるやり方ですね。プログラムをつくるときもつくりこみすぎないようにしています。だからいざやってみたら子どもたちがあまり興味を持たないとか、予想とは全然違うところに子どもたちの関心が集まることもあります。

2年前から豊田市博物館に協力をお願いして一緒にプログラムをつくっているんですけど、時間の幅もカッチリ決めるのではなく、子どもたちの興味が強くでたところは時間を取ったりしてカスタマイズしています。博物館には「エデュケーター」という方がいて、学校の理科や社会の先生だった方たちなんですね。その元先生方がすごく喜んでくれて。「本当は学校でも子どもの興味のままに深めていくようなやり方がしたかった」って。

先日もエデュケーターさんが立体顕微鏡を出してくれて、子どもたちと水の中のクマムシを観察したんです。どこまで興味を持つかわからない中でやったんですけど、みんな大好きでずっと見ていたから「しばらくここで観察していようか」みたいな。

――子ども自身の興味や意思を尊重してかかわるんですね。

かのこで料理をつくったりするときも、たとえばギョーザだったら「ネギは入れないで」って言う子がいる。

私たちはいろんなときにそうするんですけど、「じゃあ選べるようにしよう」と。それぞれが入れたい具材を入れて包むんです。

そしたらネギは入れないでと言っていた子も結局ネギも入れて「おいしかった。ネギ食べられたわ」となったりする。とにかくやってみないとわからないからやってみる。子どもたちがポロッとつぶやいたことも、実現するようになるべく手伝ったり、イヤだと言っていたこともあとから変えられるようにするとか、余白を多く取るようにしてますね。

そうしていると最初は「興味ない」とか「やらないもん」と言っていた子が参加することもすごく多いんですよ。みんなが楽しそうにしてると戻ってくる(笑)。もうその子のためのアクティビティだったかなと思うぐらい、熱心にやっていたりしますよね。

かのこではメンバー同士の対話を重視している。話しあいの中で思考力をつけ、人と関わる力をつけてほしいとの思いがある。

何が正解かは私たちもわからない

私は主権者教育が大事だとすごく思っていて、それがかのこの柱になってるんです。自分の存在や自分の働きかけが社会を変える。そこにつながる経験や、小さな成功体験を積んで人生の糧にしてほしいなと思っていて。

自分は社会の構成員として関与しているし、何かできるんだ。「言ってもどうせだめ」じゃなくて、言ったら変わるし、やれば変えられる。そういうことを日々の中でいっぱい体験して、自分のお土産として持ち帰ってほしいなと思っています。

――成長していく中で、自分を支える力になりますね。

かのこは「オーナーシップ」というコンセプトを置いているんです。

自分の人生の舵取りを自分でする、そのことをスタッフみんなが探求してるんですね。スタッフは脱サラした人が多くて、いわゆる社会のレールに乗らない生き方で人生の舵取りをしようとしている人たちなんです。私たち大人も模索しているんですよ。

何が正解かはわからない。

だから自分で考えて決めていこうって。それは子どもたちにも浸透してるかもしれないですね。

かのこでは「自分のことは自分で決められる」「この自分で大丈夫と思える」「Noも安心して言える」を大切にしている。

松平こどもサークル・かのこ
住 所:愛知県豊田市九久平町簗場64
日 時:火曜〜金曜10時~15時
利用料:参加費3,000円/回 月謝21,000円/月
対象:小学生
問合せ:kanokointheforest@gmail.com

金子(A)

 

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