子どもの成長に沿った学校・学びの場を
地域でキラリ☆な人を取材!
びーんずメイトVol.20
フリースクール「小さなイエナ@浦安」代表・山田順子さん
異年齢による学級構成や、個別自立学習
(自分で選ぶ学び)など、近年注目が
高まっているドイツ生まれ・オランダ育ちの
「イエナプラン教育」。
そのイエナプランを基に
千葉県浦安市でフリースクールを
運営されている山田順子さんに、
活動への思いと原点となった
ご自身の体験をうかがいました。
――山田さんはイエナプランにはどんなふうに出会われたんですか?
「イエナプラン」を知ったのは2008年です。ちょうど3年間運営してきたフリースクールを財政的な理由から閉じようとしていたころで。
イエナプランの理念よりも、まず先に「3学年で一クラス」ということに興味を持ちました。2人先生がいれば小学校ができるし、もうあと1クラスつくれば3人の先生で小学校から中学校までできる! と。そこへの興味です(笑)。スクールの運営に一番悩んでいたときだったので。
そこから一人で勉強を始めて――2010年に初めてリヒテルズ直子さん(※)の講演を聞いて、やっぱりすごく衝撃を受けました。そのころはリヒテルズさんが来日すると、追っかけをしてたんです(笑)。その追っかけ仲間にお隣の江戸川区の小学校の先生がいらして親しくなって、「じゃあ一緒に勉強会しましょう」って、月一回の勉強会を浦安で始めたんです。
※オランダ在住の教育研究者で、日本におけるイエナプラン教育の第一人者
そうして勉強会を続けていると実践の場がほしくなるんですね。それで2016年に「寺子屋イエナ」を子どもたちの放課後の時間帯に始めたんです。
いろんなところでイエナプランの話をしたんですけど、その中で「子どもが不登校になって行き場がないんです」っていうお母さんと出会って。「じゃあ、ちょっと遠いですけど浦安まで来られますか?」「行きます」ということで、この「小さなイエナ@浦安」が始まったんですよ。
――新しい教育に興味を持った、そもそものきっかけを教えていただけますか?
もともと高校の教師だったんですが、家族で三回海外に出ていまして。海外から帰って来たときの経験がなければ、こういう活動をしてないと思うんです。たぶん「わかりやすい授業、楽しい授業をしよう」という先生をしていたと思うんですけどね。
日本の学校とはストレスがまったく違う
子ども四人との海外の生活でいろんな学校を見てきたんですけど、本当に普通の公立の学校が素晴らしい授業をしてるんです。しかも楽しい! 帰国して日本の学校に戻るたびに、その差にショックを受けて。親子でものすごくしんどかったんです。
たとえば月曜日なんて、上履きとか雑巾とか、週末に洗って「持っていかないといけないもの」がすごく多いんですね。
それが海外の学校だと、毎日筆箱一つ持っていけばいいんですよ。教科書もなにもかも学校にある。だから「夢見心地で、夢の続きを見ながらでも学校に行けるね」って子どもたちと話をしてたんですけどね(笑)。
「子どもにはストレスをかけないように」っていう思いが学校の先生にも大人にもすごくある。日本の場合、まったく違いますよね? ストレスをかけてでも勉強させようという、そこは大きく違うので。帰国したときは子どもたちもすごく苦労しました。辛い思いもしたと思います。
特に次女なんかそうですね。3年間ロンドンにいて帰国して、しばらくしたら小学校の担任の先生に呼び出されて。私の目の前にドーンとドリルを積まれて、「今のままだとお子さんが授業に付いていけないから、おうちでこれをやらせてください」って。まあ先生もすごく心配してくださったんですが、そのとき私が思ったのは「うちの子どもだけじゃなくて、他の子どもたちもこれじゃあ大変だろうな」って。
みんなが選べる場所がほしい
アメリカに行ったときは、「学校が荒れてる」っていう噂があったのですごく不安だったんです。でも行ってみたら全然違う。市内の全部の学校のリストがあって、子どもの英語力とかそういうのも含めて丁寧に説明してくれて、外国から来た子も地元の子も関係なくどこでも選べるんです。スクールバスもあるし。
――小さい校区で指定されないんですね?
最初に行ったロンドンもですけど、公立校に個性があって、全て選べるんです。 それにスポーツ施設と日本の公民館を合わせたような公共施設があって、「学校に行っていない子はここにいていいよ」って。それが全然オッケーなんです。そこからまず驚きだったんですけどね。1988年でしたけど、日本では当時「登校拒否」って言われていた時代で、そんなことは認められていなかったときですね。
うちの子たちには「サンキュー」「ソーリー」「トイレット」だけ教えて、日本人のいない学校にぽんぽんって入れたんですけど、それでも「楽しかった」って言うんです。本当にスムーズに入れたので、帰国したときのギャップが大きかったんです。
日本にも新しい自由な学校があれば、子どもたちが選んで行ける。どうしてもそういう場所、「公立のオルタナティブスクール」がほしいなと思って行政にも働きかけているところです。
別にその学校がイエナスクールでなくてもいいんです。一人ひとりの子どもの成長に沿った学校・学びの場だったら、別に何方式でもいい。子ども本位の教育、それも家庭の経済状況に左右されず誰もが選べる公立の学校がつくりたい。一番難しいんですけど(笑)。それが希望ですね。
フリースクール「小さなイエナ@浦安」
〒279-0004
住所 :千葉県浦安市猫実3丁目9-30
メール :jenaplan.urayasu@gmail.com
利用日 :水・金 10:30~15:30
対象 :年長〜中学3年生
金子(A)
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不登校インタビュー事例集『雲の向こうはいつも青空』Vol.10
学校に行かなくてほんとうに大丈夫なの?
もちろん、そこに正解なんてありません。
世の中の多くのものごとと同じように。
でも、
いろんな例を見聞きし、知ることができれば、
不安を和らげるのに役立つのではないか。
そんな思いから
自らも息子の不登校を体験した親である
びーんずネットの二人が、不登校をテーマに
インタビュー事例集を作成しました。
不登校・ひきこもりを経験した人。
その保護者。
子どもたちに寄り添う人。
そして自分の学びを実践した人。
そんな七人七色の「雲と青空」を、
丹念に取材してまとめました。
雲を抜けた先には、
いつも青空が広がっている――。
ぜひ、ページを繰って、
あなた自身でそれを確かめてみてください。