「大きなお世話」を焼きあってもいいのかな

地域でキラリ☆な人を取材!
びーんずメイトVol.27
NPO法人Kauhora代表理事 上村ゆみ子さん

2020年から福岡県新宮町の畑を中心に、
不登校生の居場所づくり・自立支援を
行っている「Kauhora」代表の
上村ゆみ子さん。

地元立花高校の農業班の生徒さんや
地域の方々と協働しながら、
「畑を不登校の子どもたちの居場所に」と、
主にサツマイモの栽培から商品開発、
販売に取り組んでいます。

現在の活動についてうかがいました。

耕作放棄地を活用した畑が、子どもたちの居場所になっている

――カウホラでは畑を中心にした不登校生の自立支援活動とともに、保護者向けのお話会も開催されているそうですね。 

「しくじり母ちゃん愛の華」って名前なんです。人間なんだから間違って当たり前だし、しくじってナンボみたいな。お母さん方にざっくばらんに、かしこまらずにお話ししてほしい気持ちがあって、そんな名前にしてみました。

私も偉そうなことを言える人間じゃないので、自分のしくじりをただただ伝えるほうが合ってるなと(笑)。

「こういうところを間違っちゃったんですけど、今はこうなりました」とか、笑いあいながら話すっていう感じの会ですね。

NPO法人Kauhora代表理事・上村ゆみ子さん

――子どもたちの居場所としての畑には今、お子さんたちはどんなふうに来られてるんですか?

曜日や時間は特に決めていません。子どもたちが今日は調子がいいなとか悪いなとか自分で感じて行動できるように、こちらはいつでも受け入れるようにしています。

ただこの春はサツマイモの植え付けが本当にバタバタで。急に植えるところがなくなってしまったんですよ。それまで使っていた畑の地下水位が高くなって、畑の半分が水でビシャビシャで使えなくなってしまったんです。

でも苗は去年と同じ数だけ用意していたので、「これはまずい」って。ものすごく急いで植えるところを探したんですね。

そうしたら「じゃあうちの畑へ植えたらいいよ」って申し出てくださったおじいちゃんがいて。もうピンチを救ってもらった感じです。

地元ベーカリーとのコラボでさつまいもパンを販売。収穫から商品開発、その先の「販売」までを常に意識している。

憧れの「トトロの井戸」

今年はまた新しく農地が広がったんですけど、そのうちのひとつに使われていない井戸があったんですよ。それを使えるようにしたいと思って――井戸に水はありそうだけど、どうすれば使えるようになるのか、私も初めての経験だったのでまったくわからなくて。

――それでどうしたんですか?

地域のおじいちゃんたちに相談したら、集まってきてくださったんです。

映画『となりのトトロ』に井戸の水を汲むシーンがありますよね? 私あの手押しポンプに憧れていて。

「これって手押しポンプにできますか?」って聞いたら「作ってあげるよ」って、手作りで井戸のポンプを作ってくださった方がいて。

井戸を再生するのには、まず井戸の水を抜いて、そこから水が自然に湧き出してくるのを待って――それを何回か続けて。中の掃除もみんなで一人ずつはしごを入れて入って、交代で壁を掃除したんです。酸欠にならないように、中に空気を送りながら。

――すごい。怖くなかったですか?

いや、怖いですよ。中はなめくじとかクモとか虫だらけで(笑)。

でもやっぱり楽しいじゃないですか?

そもそも井戸に関わったことなんてないし、大人でもワクワクするし。みんなでキャーキャー言いながらやってると、最初は遠くのほうで一人で虫をつついてた子も、最後のほうには井戸の周りに寄ってきてくれたり。とにかく一人じゃできない作業なので、みんなで協力し合って。ハシゴを押さえる役とか、井戸に空気を送り込む役とか、そのときに瞬発的に生まれる役割ってあるんですよね。それを小学生から高校生、大人までが自分の得意分野を生かして関わる。その中で、一体感が生まれるというか。

その時々にしかない体験を楽しみながら、みんなで作業してますね。

上村さんの憧れだった手押し井戸ポンプも、地域の方の協力で実現した。畑を中心に世代の枠を超えて笑顔が広がる。

伸びとったけん、刈っとったよ

――協力してくれる地域の方にとっても、ご自身のスキルや経験を生かす機会にもなりますね。

そうですね。みなさん楽しみに来てくださるし、いろいろお話しができたりして、地域交流としてもすごくいいなと思いますね。それに畑で作業してると「あれ? 隣の畑、今年は収穫遅いな」とか「あのおじいちゃん、来てないな」とか、何日か来ていないときはみんなで心配したり。

畑の状態を見ると持ち主のおじいちゃん、おばあちゃんたちの体調も自然とわかるというか。地域のお年寄りの見守りにもなるんだなと思って。

畑を介してだとお宅にも訪問しやすいですね。作物持って行って「どうされました?」みたいな。交流もしやすいですし、やっぱり大切なことだなと思いますね。

――お互いを見守りあうような。

近所の畑の方が知らないうちに雑草を刈ってくれたりするんです、うちの畑の(笑)。「伸びとったけん、刈っとったよ」って。

今の時代、ご近所どうしで「大きなお世話」をみなさん焼かなくなったじゃないですか?

でも大きなお世話を焼きあっていいのかなというか。そういう関係性が生まれていることがすごくいいなって思います。

カウホラはハワイの言葉で『花を咲かせる』という意味。誰もが内に秘めた可能性を咲かせられる未来を目指している。

NPO法人Kauhora(カウホラ)
〒福岡県糟屋郡新宮町原上1579番地18
Mail:kauhora.inf@gmail.com
しくじり母ちゃん「愛の華」毎月開催
会 場:フルフル風の森 福岡市東区香住ヶ丘7-4-2
参加費:1000円
対 象:不登校児童・生徒の保護者

金子(A)

 

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不登校インタビュー事例集『雲の向こうはいつも青空』Vol.10

学校へ行かずにいると、将来どうなるの?
学校に行かなくてほんとうに大丈夫なの?

もちろん、そこに正解なんてありません。
世の中の多くのものごとと同じように。

でも、
いろんな例を見聞きし、知ることができれば、
不安を和らげるのに役立つのではないか。

そんな思いから
自らも息子の不登校を体験した親である
びーんずネットの二人が、不登校をテーマに
インタビュー事例集を作成しました。

不登校・ひきこもりを経験した人。
その保護者。
子どもたちに寄り添う人。
そして自分の学びを実践した人。

そんな七人七色の「雲と青空」を、
丹念に取材してまとめました。

雲を抜けた先には、
いつも青空が広がっている――。

ぜひ、ページを繰って、
あなた自身でそれを確かめてみてください。

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