母親は子どもに去られるためにそこにいなければならない
溶けそうに熱い坂道を登って、
コンビニでアイスクリームを
いっぱい買ってきて、
息子と「どれにする~?」と
ワイワイいいながら選び、
蝉の鳴き声を聞きながら、
エアコンがきいた部屋で
それぞれ静かにアイスクリームを食べる。
ああ、幸せじゃ。
これを幸せといわずして、
何を幸せというのであろうか。
息子は14歳で、
今は学校にはいかずに家で過ごしている。
ホームスクーラーということになるのかな。
自分なりに勉強したり、
ゲームして過ごしていて、
一人で映画に行ったり、
友達とカラオケやテーマパークに行ったり。
「ぼくはイキイキしたひきこもりだよ」
って本人は言っている。
小学校3年生の秋に、
「ぼくは学校をやめる!」
と号泣して不登校になり、
半年間の引きこもりののちに、
デモクラティックスクールに入学したのが
2014年の5月のことで。
たしかその年の夏休みに、息子が一人で
名古屋のおじいちゃんのところに
行ったなあと思い出し、
昔書いたブログを読み返してみたら、
当時のわたしの気持ちがすごく伝わってきて、
けっこう親子でしんどかった時期を
なんとか超えてきたあの頃を思い出して、
蝉の声を聞きながら、
なんだか感傷的になってしまったのですが。
よろしければ、読んでみてください。
母親は子どもに去られるためにそこにいなければならない
ちび忍者が、一人で名古屋に旅立っていきました。
朝から張り切って上機嫌だった息子は、新幹線のホームについた頃には、緊張が高まってきたのか言葉少なに。
たかだか、一週間おじいちゃんの家に泊まってくるだけです。
でも、彼にとっては物心ついてから、はじめての自宅以外での一人長期滞在。
しかも、たった一人で新幹線に乗ってゆくわけで、確かに緊張もするでしょう。
いよいよ、新幹線がホームに滑り込んできた時、彼はさっと私を見上げ、
「おかあさん、元気でね」
そう言いました。
そして、大きな、重たいリュックをゆらしながら新幹線に乗り込み、座席の窓から、見えなくなるまでずーっと、手を振っていました。
「おかあさん、元気でね」
初めて言われたような気がします。
大げさだねーと言いたい所でしたが、彼の悲壮な決意が伝わってきて、胸がいっぱいになりました。
子どもは、こんな経験を重ねながら、少しずつ少しずつ、親から離れていくんでしょう。
Mothers have to be there to be left.
母親は子どもに去られるためにそこにいなければならない
田中茂樹先生の『子どもを信じること』(大隅書店)で紹介されている、心理学者エルナ・フルマンの言葉(論文タイトル)です。
この章で田中先生は、3歳くらいの子どもが一本橋を渡ろうとして、母親はそのたもとで後ろから見守っている、という場面を例にあげています。
「子どもは、渡りたいけど怖い。何度も振り返っては母親のほうを見る。
この時、母親は子どもに、ずっとあなたを見守っているよ、というメッセージを表情や仕草で送ってやることで、子どもはその親からの支えを頼りに、親から離れて橋を渡っていく。」
新幹線のホームで、息子を見送ったあとに私は、彼の出発を誇らしく思う気持ちと、一抹の寂しさを感じていました。
いつか、息子が自分から離れ、独り立ちしていく日が来る事。
その時は、きっとこんな気持ちなんだろうなーと、思いながら。
(2014年8月26日)
金子(A)
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