迷ったときは、信じてみよう

迷ったときは、信じてみよう

びーんずメイトVol.45
ビリーバーズ広尾
熊野英一さん

2021年10月に東京都港区で始まった
「ビリーバーズ広尾」。

時間割やカリキュラムはなく、
子どもたちが安心して過ごせる
“来たいときに来られる”居場所です。

子どもたちの主体性を尊重した
かかわりを心がけているという
代表理事の熊野英一さんに、
子どもたちと居場所への
思いをうかがいました。

大きな家のリビング・ルームのような明るい雰囲気の室内。

――熊野さんは2007年に「株式会社子育て支援」を創業されて、ビリーバーズを始めたのが5年前ですね。居場所を始めたきっかけはなんだったんですか?

きっかけはコロナ禍です。ここはもともとは株式会社子育て支援の本社なんです。私は保育所や児童館の運営とか子どもにかかわる仕事に20年関わっているんですけど、コロナ禍の2020年にスタッフが全員在宅勤務になって、ここがガランと空いてしまったんです。

一方で平日の日中どこかに行きたくてもその場所がないから仕方なくずっと家にいる子たちがいることも知ってました。何か世の中に求められていることがないかというときに、不登校支援とか居場所づくりに自分のフォーカスが合ったというか。自分の経験と力と仲間とこの場所を使えば居場所ができるなとスタートした感じですね。

一般社団法人ビリーバーズ 代表理事・熊野英一さん

――入会金・年会費はなし。チケット制で利用できるのもユニークですね。

最初にたくさんお金を払っていただくのはなしにしようと。利用料も月額固定にしちゃうと、来られる日と来られない日があるだろうから、都度払いができるようにしました。「お金払っちゃったから行きなさいよ」となったら本末転倒じゃないですか。学校に行くのがイヤなのに、こっちにも無理やり行かせるのはおかしな話なので、それがないように配慮をしています。

――お部屋のインテリアも素敵です。

もともと大人が集まるサロンとしてデザインしたので、ちょっと大人っぽい雰囲気ですよね。子どもっぽくない。でもそれが結果的によかったと思っていて。

子どもを子ども扱いしない

我々は子どもを子ども扱いしない。子どもらしさは受けとめるけど、こっちから「この子たち、まだちっちゃいよね」というふうには見ないようにしようと。大人も子どももお互い一方的に我慢することもなく、押し付けないようにして。

この場所はとにかくイエスかノーか、自分で考えて自分で決めて、その責任を取る練習の場だと思ってるから、プログラムや時間を決めて全体で行動するみたいなことはほとんどしていないですね。

好きなソファーやテーブルでリラックスして1日を過ごす子どもたち。自分で1日の過ごし方を決めることができる。

私たちはこの場にいるけど別に先生でもないし、この場を共に過ごすカフェの常連のおじさんみたいなつもりで私はいます。まあでも「ただいる」って難しいんですよ。

たとえばすごく天気もいいし、すぐ近所に公園があるのに「なんでゲームばっかりしているの?」と思ったりしないこともない。でも今この子たちはここでゲームをしてこんなにも楽しそうなら、まあそれはそれでいいかと。こちらの思いを伝えたところで動かないでしょうし、本人たちは何も困っていない(笑)。

――見ていてもみんな元気ですよね。

ただここに来てる子たちがみんな最初から元気だったわけじゃなくて、マスクしてサングラスして――みたいなところから、どんどん変わっていくんです。ここでは別に一日しゃべらなくても誰もどうこう言わない。そういうのがじわじわ効いて、気づいたら元気になる。結局「ありのままの自分でいいんだ」という確認ができるということじゃないかなと思いますね。

もともと私はアドラー心理学をお伝えする講座や研修の仕事をずっとやってきてるので、ビリーバーズもその延長にあります。ベースにある思想として、子どもと対等にいることや、子どもを大人が操作しないようにすること、そういうことはすごく気をつけてかかわるようにはしていますし、「信頼」をすごく大事にしたいと思ってビリーバーズと名付けているんです。疑うのではなく信じようと決める。戒めじゃないけど、軸ですよね。どっちかと迷ったときには、じゃあ信じてみようという。

子どもの主体性を尊重しているため決まった時間割はない。室内で過ごすか外に出て公園で遊ぶかもすべて子ども自身が選ぶ。

自分のことをする。時の力を活用する

――とはいえ信じて見守るのは難しくて、親はどうしても心配になってしまいます。

その気持ちはすごくわかりますし共感できるけど、でもそこにこだわり続けるのは私は同意できない。

「時のパワーを活用すること」がけっこう大事だと思っています。今すぐ解決しようとしないというか、時間のおかげで動くことも、なんとかなることもあるんです。

あとは親はもっと自分のことをしたほうがいいと思います。親が自分の人生を生きると子どもも「じゃあ自分のことは自分で」となることもある。自分のことをして、時の力を活用するというのが今まで私が見てきた中ではうまくいってる感じがしますね。

前向きにあきらめて手放すと、意外とツルンと物事が動くこともある。100パーセントの約束はしませんが、トライする価値はあるかなと思います。

この間、ビリーバーズの初期のころに来ていた当時五年生だった子が、中学卒業のタイミングで連絡をくれたんですよ。「中学には行かない選択をしてたけど、あのころビリーバーズに通っていた下地があったから今は自分のやりたい進路に進んでいます」と。うれしいですよね。5年間の積み重ねでだんだんそういう事例も生まれています。

 

子どもも大人も自分らしく過ごせる居場所が広がる社会を目指して、月に一度居場所に関わる人同士の対話も行っている。

ビリーバーズ広尾
住 所 東京都港区南麻布5-3-20 有栖川ビル2F
日 時 原則として 毎週 月・火・水・木・金 10:00~14:00(祝日と重なった場合は休室)
利用料 入会金・年会費・見学は無料
単発チケット6,900円・5回チケット31,800円・10回チケット52,000円・通い放題チケット(定額制・1か月)62,500円

金子(A)

 

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