自分のいいところ、できるところを磨けばいい

地域でキラリ☆な人を取材!
びーんずメイトVol.28
教育活動総合サポートセンター 山田雅太さん・保﨑万里さん

神奈川県川崎市で子どもたちの学ぶ場、
憩いの場を提供している認定NPO法人
教育活動総合サポートセンターは、
公立学校を退職した教職員が中心になって
2004年に設立されました。

ご自身も学校の先生だった経験をお持ちの、
理事長を務める山田雅太さんと
相談員の保﨑万里さんに、
ご活動への思いをうかがいました。

NPO法人教育活動総合サポートセンター理事長・山田雅太さん

――教育活動総合サポートセンターは今年度で設立20周年を迎えるそうですね。

山田:私が理事長に就任してからまだ2年なんですが、ここは私たちの先輩方が20年前に立ち上げた施設です。退職した校長先生がほとんどなんですが、学校運営をしてきた中ですくい取れなかった子どもたち、つまり学校に来ない子、来られない子がたくさんいたと。そういう子たちをなんとか学校以外の場ですくい取ってあげられないかという趣旨でここをつくったと聞いています。「学習支援」がメインの居場所というのがここの特徴ですね。

NPO法人教育活動総合サポートセンター相談員・保﨑万里さん

保﨑:校長先生たちも来れなくなった子たちをわかっていながら、当時は何も手を差し伸べられなかったという後悔があった。それでなんとか自信をつけて学校に戻してあげたいという気持ちが大きかったみたいなんです。だから最初は「登校支援」と言っていました。でも世の中が変わってきて不登校の見方も変わって、もう今では登校支援という言葉は使っていません。

――今、何人くらい通われていますか?

保﨑:サポートセンターとして川崎市内で3つの居場所を運営していて、そのうちの1つがここ「こどもサポート宮ノ下」です。学習登録をしている子が約70名で、小学生が20名、中学生が50名ぐらいです。

山田:ここに通って来る子は繊細で過敏な子が多いので、大勢の子どもたちの中だといられない。でも先生と一対一だったら学習できる。そういう子が多いですね。

保護者もそうですけど、不登校の子どもたちも学習に対する要望がやっぱり強いんです。「勉強がわかるようになりたい」と。そういう子たちに自信をつけてもらうのがここの役割なのかなと私は思っています。

元教員や専門性の高いスタッフが一対一で支援を行う。不登校に限らず、ひとり親家庭や外国籍の子どもたちの学習支援もある。

できないことをやらせる前に

――保護者も「学習」を心配しますよね?

山田:保護者の心配や不安って、そこが一番ですね。でも子どもはまた違うことを考えていて。その辺に親子のギャップがある。

保﨑:親は子どもができないことを、なんとかしてやらせようとするけど、私たちとしてはまず子ども自身が好きでやりたいことを優先してほしいんです。それを私が子どもに聞いているのに、たいていの親御さんが横から答えちゃうんですね(笑)。

山田:ここには美術の専門の先生が何人かいるので、美術もやるんですよ。子どもが絵を一生懸命描くんです。その光景がすごくいいんです。感動しますよ。ここで一生懸命、絵を描いてくれるんです。先生とも一対一ですからね。子どもが満足そうにして帰っていくのを見ると、ああ、この子美術やってよかったんだなと思いますよ。

保﨑:美術で満足して、自信もついてきて。そうすると「数学もやってみようかな」って、今は数学をやってる子もいるんです。 焦らずに、まずその子のやりたいことをして、「自分もなかなかなモンだ」って自信をつけるのが大事ですね。

いいところ、できるところを出しあって

山田:私は子どもたちにはいろんな居場所があっていいと思ってます。実際、近くの「フリースペースえん(※)」に行ってる子でここに来てる子もいます。地域の学校やフリースクールとの連携もあります。いろんなところで無理なく連携してサポートができればいいんじゃないかなと思います。

※川崎市子ども夢パーク内にある、学校や家庭・地域の中に居場所を見いだせない子どもや若者が安心して過ごせる居場所。

保﨑:ここも人数や場所の関係もあって、1人が週1回か2回しか来られません。しかも1回1時間でやれることには限りがあるので、ここだけじゃ足りなくて当たり前だなって。子どもが「他にも何かやってみたいな」と思うエネルギーをつくるのがここの仕事かなと思ってます。

「子どもの声から不登校を考える」を研究テーマに、報告会や不登校シンポジウムを積極的に開催している。

山田:以前私がいた学校の子で、大学生になる子がこの間も来たんです。

その子の生き様を見てると――ここにもお世話になっていた子で、学習障害があって自分で字を「書けない」んですね。でもパソコンをやりだしてから字を「打てる」ようになったんです。高校もあちこち3つ行きました。最初に入った大学をやめて今、別の大学に編入して。

「いろいろあったけど、いろんなところでサポートをしてもらったから私、こうして生きてる。今までは自分のできないことばかりに目を向けて苦しんでた。でも自分にできることを磨けばいいんだってわかったら、すごくラクになった」と。

「学校に行け行け言うお母さんがイヤでしょっちゅうけんかしてたけど、大学は教育学部に行ったから今はお母さんより私のほうが教育のことわかってる」って(笑)。

そういう子どもたちの声をもう一度、大人は聞いてわかってほしい。みんなが自分のいいところ、できることを出しあって、「できないことはいいじゃん」って。

そういう世の中になってほしいなと。 今日もここには小学2年生の子から中学生まで来てますけど、そういう意味で「自分にできることをここで磨いているんだな」って思ってもらえたらいいと思います。

「子たちに力を!」を合言葉に、学習支援や相談事業など子どもたちの成長をサポートする様々な活動をおこなっている。

認定NPO法人教育活動総合サポートセンター
〒213-0033
神奈川県川崎市高津区下作延5丁目11−8
電話: 044-877-0553
日時:月曜午後・火〜金曜日9時〜17時
※通所する曜日や時間は希望をもとに相談して決定

金子(A)

 

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不登校インタビュー事例集『雲の向こうはいつも青空』Vol.10

学校へ行かずにいると、将来どうなるの?
学校に行かなくてほんとうに大丈夫なの?

もちろん、そこに正解なんてありません。
世の中の多くのものごとと同じように。

でも、
いろんな例を見聞きし、知ることができれば、
不安を和らげるのに役立つのではないか。

そんな思いから
自らも息子の不登校を体験した親である
びーんずネットの二人が、不登校をテーマに
インタビュー事例集を作成しました。

不登校・ひきこもりを経験した人。
その保護者。
子どもたちに寄り添う人。
そして自分の学びを実践した人。

そんな七人七色の「雲と青空」を、
丹念に取材してまとめました。

雲を抜けた先には、
いつも青空が広がっている――。

ぜひ、ページを繰って、
あなた自身でそれを確かめてみてください。

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