サマになるのが早い子もいれば遅い子もいる
地域でキラリ☆な人を取材!
びーんずメイトVol.11「多摩川太鼓」
五十嵐努さん
神奈川県川崎市幸区を中心に、30年近く
「多摩川太鼓」を主宰してきた五十嵐さん。
やんちゃな子も、
複雑な家庭事情を抱えた子も、すべて
「太鼓を叩きたい」
という気持ちさえあれば、
誰でも受け入れてきたと言います。
地域の子どもたちの居場所として、
太鼓を通じて関わり続けてきた
五十嵐さんにお話をうかがいました。
――「多摩川太鼓」には小さなお子さんから大人までいらっしゃるんですよね?
二歳からやってる子もいます。はじめはお姉ちゃんについて来てたんだけど、太鼓が好きで。その親御さんも一緒に太鼓をやり始めて、家族で参加していたりね。
――子どもたちにとっては、単に太鼓を習うだけじゃなくて、太鼓を叩くことで……。
今でいうところの居場所ですね。
気に入ったらいればいい
けっこう私みたいな活動をしてる人って面倒見のいい人が多くて、色々とこう世話を焼くじゃないですか?
でも実は私はそんなに面倒見がいいと思ってないんです。あんまり深入りもしないし、話を聞いてアドバイスをするというようなこともあんまりない。
ただ、ここが居場所として気に入ったんだったらいればいいじゃん、という感じですね。
――必要なときには助けになる。居場所としての「場」を大事にしていらっしゃるんですね。
何かのときにそういう場があれば、と。
――長いご活動の中では、様々な困難を抱えたお子さんも参加して――子ども食堂や寺子屋のような役割もあったと聞いています。そういうお子さんとはどういうふうにつながるんですか?
うちのカミさんは元保育士なんですが、見方がいろいろ鋭くて。
「普通の子はね、あんたみたいにおっかない顔してる大人には寄ってこない。寄ってくる子は何かね、心にある。あんたのほうも何かそんな子を嗅ぎ分ける嗅覚があるよね」って言っていて(笑)。
だから特に観察をしてるっていう認識は全くないんだけど、結果的にそうなってる。
――何かこう、目に入るというか、惹かれるという感じですか?
ちょっと異質なものに惹かれるとか――何かあるんだろうね、きっと。
男の子の三人兄弟で、小学校の三、四年生くらいから二歳くらいの弟と小学校一年生くらいの弟を連れて公園に来てた子がいたんですよ。
その子に私が声をかけて。
その子のお母さんは診断がついているかどうかは別にして、アルコール依存症的で。
長男だった彼は、小学三、四年生のころから酔いつぶれたお母ちゃんを飲み屋に迎えに行ったりしてたんですね。
多摩川太鼓には何回か来たんだけど、やっぱりなかなか続けては来れなくて。でもつながりは切らさないようにしてました。
昔やんちゃしてたメンバーが「五十嵐さんはヤンキーにすぐ声をかける」って言うんですけどね、家の事情で高校に行けずに少年院に送られた子がいたんです。
とにかく少年院から戻ってきたら他のところに行かせたらダメだと思って。ここら辺にいれば私なんかも目が届くし。
知り合いの保護司も「あいつは五十嵐さんに任したからね」とか言うんですよ。 「それあんたの仕事だろう!」って(笑)。
だんだんサマになっていく
あと私、見た目はこんなですけど(笑)、見た目ほどはそんなにビシバシ教えないんです。
――どんなふうに教えていらっしゃるんですか?
褒めるだけですね。
最初から何でこんなに上手いのかっていう子もいれば、まあ、こっちがいくら言ってもなかなかサマにならない子もいる。
一生懸命にやってるんだけどサマにならない子には、やってみせて教えることはするけど、できないところを指摘して直すようなことはやらない。
でもそういう子でも数を重ねて年数が経っていく中で、だんだんサマになってくるんですよね。サマになるのが、早い子もいれば遅い子もいるんだけど、そういうもんだと思ってるから。あとは子どもたち同士で教えさせる。そういう教え方ですね。
――五十嵐さんが子どもたちに太鼓を教えていて一番嬉しいのはどんなときですか?
地域の祭りなんかで大人から褒められるのは一番嬉しいですね、やっぱり。
例えばピアノがいくら上手でも、地域の人には分からないじゃないですか?
でもうちの子どもたちは太鼓でお祭りを盛り上げて、「盛り上げてくれてありがとう」って地域の人からお礼を言われる。上から目線でなく、お祭りを盛り上げてくれた「担い手」として評価してもらえる。
ツールは別に何でもいいのかもしれないけど、太鼓っていうのは自己肯定感ということで言えば良いツールかなって思ってますね。
スポットライトが当たるセンター位置もないし――みんなが主役なんです。
多摩川太鼓
開催日:隔週日曜日
連絡先:090-1708-6635 五十嵐努
金子(A)
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不登校インタビュー事例集『雲の向こうはいつも青空』Vol.10
学校に行かなくてほんとうに大丈夫なの?
もちろん、そこに正解なんてありません。
世の中の多くのものごとと同じように。
でも、
いろんな例を見聞きし、知ることができれば、
不安を和らげるのに役立つのではないか。
そんな思いから
自らも息子の不登校を体験した親である
びーんずネットの二人が、不登校をテーマに
インタビュー事例集を作成しました。
不登校・ひきこもりを経験した人。
その保護者。
子どもたちに寄り添う人。
そして自分の学びを実践した人。
そんな七人七色の「雲と青空」を、
丹念に取材してまとめました。
雲を抜けた先には、
いつも青空が広がっている――。
ぜひ、ページを繰って、
あなた自身でそれを確かめてみてください。