その子がその子らしくいられる場を

びーんずメイトVol.36
フリースクールヒュッゲ代表
関口健志さん

新潟県三条市のフリースクール
ヒュッゲ代表の関口健志さんは、
家庭教師、ひきこもり支援相談士として、
不登校・ひきこもりなどで
悩み苦しんでいる親子の声を
25年以上にわたって聞いてきました。

「自分らしく生きるもうひとつの居場所」

をモットーに掲げて活動する関口さんに、
その思いをうかがいました。

自学をしたり一緒にゲームをしたり、思い思いに過ごす子たち

――ヒュッゲは今年で開設から七年目とうかがっています。名前はデンマーク語のHyggeからですよね。

「人と人のふれあいから生まれる、穏やかな居心地の良い雰囲気」という意味です。話しやすい環境があってこそ、本音が出てくると思っていますし、とにかく私自身もよくしゃべるので(笑)。人と人とのつながりの中でお互いに豊かになっていく時間を大事にしたいなと。

フリースクールを始めたのは2019年の1月7日です。当初は昼間使っていない塾の空いている時間帯を利用させていただいて、2、3年やってから今の場所に移りました。今は中高生が多いんですけど、年齢制限は設けていないので、30代、40代、50代の方からのご相談もあります。

今ここに来ている中学生の子も小学生のころから長くかかわっていますし、兄弟で来ていた時期もありますね。小学校で利用して、中学でちょっと利用して。また高校で利用するという子もいます。

――学校とフリースクールの両方を、その時々で利用して。

そうですね。しばらくヒュッゲをお休みしてからまた来るようになる子もいます。

フリースクールヒュッゲ代表・関口健志さん

学校の勉強はあとでどうにでもなる

私はフリースクールを始める前は家庭教師を長くしてきたんですけど、いろいろと問題を抱えている子たちとかかわることが多かったんです。遺書を書いた子もいました。命にかかわる現場はわりと多かったですね。

遺書を書いた子とはそのあと何年も経ってから会う機会があったんですけど、「あの節はお世話になりました」って。今は奥さんも子どももいて、自分でお店をやっているんです。

いろいろありましたけど、長い目で見ると、それはそれでよかったのかなと。

私は三人兄弟の一番上で、末の弟は不登校を経験してますし、真ん中はひきこもりとかニートとかいろいろな時期があって。家庭の中の重たい空気は私自身も経験しているんですよ。自分の兄弟もですし、そういう子たちを見ていく中で、学校や家庭以外の「自分らしくいられる場所」が必要なんじゃないか、という思いから今に至るという感じですね。

学校の勉強はぶっちゃけ、あとでどうにでもなるんですよ。それよりまず「その子がその子らしくいられる場」があったほうがいい。すごくそう感じます。

農家から仕入れた南魚沼産コシヒカリ「ひゅっげ米」を寄付の返礼品にしている。子どもたちがラベル作成と詰め合わせも担当。

――居場所を運営する上で、関口さんが一番大切にしているのもそこですか?

そうですね。長年たくさんのケースを見て思うのは、その子を取り巻く周りの環境さえ良くなれば、その子はその子らしく自分から変わっていくんです。だから私も「こうしよう、ああしよう」とはなるべく言わないようにしてますね。

でもお母さんたちは「何かしたい」っておっしゃるんです。その「何かしたい」の根っこは愛情なんですよね。それはわかるんですけど、自分自身の心配と不安も大きくて。「周りとあわせなきゃ」という焦りになっている。

そうではなく、ちょっと視線を変えてみる。お父さん・お母さんがその子が好きなこと、得意なことに一緒にかかわって、楽しんであげれば、きっとその子のやりたいことが見えてくると思うんです。そういう中で本人が「こうしたいんだけどどうしよう?」となったときに、選択肢を提示できればいいんじゃないかなと。

自身の経験も踏まえ、当事者目線での講演活動も積極的に行っている。「不登校の現状と居場所のススメ」をテーマに話す関口さん。

余裕があれば「いい隙間」ができていく

話が少しそれるんですけど、最近すごくいいなと思った話がありまして。

お笑いとエンタメで社会課題を解決しようという、ある団体の代表の方がいるんです。その方は「いのちの電話」も担当しているんですが、あるとき「私、死にたいです」という女性からの電話がかかってきたそうなんですね。普通であれば黙って気持ちを聞くとか、何があっても死ぬのはNGって言うと思うんですけど、この方は何を言うかというと「どうやったらうまく死ねるか、一緒に考えましょうか」と。その人の「死にたい気持ち」を否定しないで、さらにその上を行くという。これこそまさに「寄りそう」という感じですよね。

お笑いもやる方なんですけど、そうやって他愛のない話を1時間も2時間もするんです。そうすると最後は死ぬことはもうどうでもよくなって、「じゃあまた来週、連絡くださいね」となる。それが4、5年も続いてるんです。

――孤独を抱えている人にとって、そんなふうに寄りそってくれる人の存在は本当に大きいですね。

親御さんたちもいっぱい抱えこんでるので、私なんかを相手にとにかく感じていることを話して、ガス抜きでもなんでもいいので、まず気持ちをラクにしてほしいです。 親御さんに余裕があれば、お子さんに相対するときに、いろんな意味で「いい隙間」ができていく。だからこそつながりが大事というのは、この活動をしていてすごく感じるところです。

「自分のやりたいこと、好きなことに自分のペースで取り組みながら、自己実現できる環境を提供したい」と関口さん。

フリースクールヒュッゲ
住所:〒959-1121 新潟県三条市善久寺3013-5
日時:平日(月〜金)9時〜15時(訪問相談は上記時間・平日以外も可)
利用料:1日コース小学生3,000円〜 月額コース小学生20,000円〜
問合せ:munchdeme96senna@gmail.com 090-3981-6005

金子(A)

 

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不登校インタビュー事例集『雲の向こうはいつも青空』Vol.10

学校へ行かずにいると、将来どうなるの?
学校に行かなくてほんとうに大丈夫なの?

もちろん、そこに正解なんてありません。
世の中の多くのものごとと同じように。

でも、
いろんな例を見聞きし、知ることができれば、
不安を和らげるのに役立つのではないか。

そんな思いから
自らも息子の不登校を体験した親である
びーんずネットの二人が、不登校をテーマに
インタビュー事例集を作成しました。

不登校・ひきこもりを経験した人。
その保護者。
子どもたちに寄り添う人。
そして自分の学びを実践した人。

そんな七人七色の「雲と青空」を、
丹念に取材してまとめました。

雲を抜けた先には、
いつも青空が広がっている――。

ぜひ、ページを繰って、
あなた自身でそれを確かめてみてください。

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