食を通じた居場所で、一歩踏み出すきっかけを

地域でキラリ☆な人を取材!
びーんずメイトVol.31
コミュニティスペース「えんくる」事業統括 菊地真紀子さん

神奈川県川崎市多摩区にある
コミュニティスペース「えんくる」。
食をきっかけに人と人とがつながる
スペースとして地域に開かれています。

フードパントリーや多世代型食堂、
コミュニティカフェのほか、
放課後の子どもの居場所も運営している
認定NPO法人フリースペースたまりば
えんくる事業統括の
菊地真紀子さんにうかがいました。

3月の「えんくる食堂」は雛祭りにちなんでのちらし寿司

――「えんくる」は2020年のちょうどコロナ禍の中でオープンされたんですね。

そうですね、2020年12月です。えんくるは「川崎市子ども夢パーク」や、川崎若者就労・生活自立支援センター「ブリュッケ」、学校に居場所を見出せない子どものためのフリースペース「えん」を運営している認定NPO法人たまりばの自主事業なんですが、そもそもは代表の西野が「コロナ禍でたくさんのご家庭が食に苦労している」という話を聞いたのがきっかけなんです。フリースペース「えん」では、「えんめし」といって、みんなでご飯を作って食べるんですが、登録制なので限られた子しか来られないし、食べられない。そういう中で、全ての家庭の子どもたちをなんとか助けたいと、食支援に特化する形で「えんくる」が始まったんです。

地域の企業やフードバンク生協や農協などから食材を寄贈いただいて、必要な方にお渡しする「フードパントリー」を2021年1月からスタートして、その年の5月から「えんくる食堂」を、7月から「えんくるCAFE」と、放課後の居場所としての「こども☆きっさ」も始めました。

今は月に一回、「相談CAFE」も開催しています。

コミュニティスペースえんくる 事業統括 菊地真紀子さん

――「えんくるCAFE」と「こども☆きっさ」は、どんな方が対象なんですか?

えんくるCAFEは地域のコミュニティカフェとしてどなたにもご利用いただける場ですね。

こども☆きっさは放課後の子どもの居場所という位置づけで、子どもが一人で入れる喫茶店なんです。平日の二時半からで、子どもはジュース一杯とお菓子ひとつが無料です。ゲームや本、漫画もありますし、仲間と一緒でも一人でも、自由に過ごしていますね。

いろんな生き方があっていいんだ

あとは「えん」の中・高生の子どもたちが来ますね。えんでは小さい子の面倒を見る側になってるような――特に高校生の子たちが、コーヒーを飲みながらマスターと話したり。カフェのマスターはえんのOBなんです。他にもえんのOGの専門学生がえんくるにいる日は、彼女にいろいろな子が相談しに来たり。

たとえば進路の話だと、通信制高校だとかいろんな選択肢がありますけど、「今後はどうやって生きていこうかな」と考えたときにロールモデルになる人がなかなか身近にいない。そういう意味でえんのOB・OGはそれぞれ少し先を行っている先輩なので、話を聞きに来て一緒にお茶をしたり。そんな居場所にもなっています。

えんくるでは一人親家庭を対象に、節約・時短料理教室も開催。シンプルな材料で手軽に作れるメニューを楽しく教わる。

――少し先を行く先輩たちの話が聞ける、貴重な場所でもあるんですね。

えんくるでは今、若者の小さな一歩を応援する「チャレンジ・ラボ」という催しを不定期で開催しているんです。先日えんのOGで海外で花屋さんをやっている女性とクリスマスリース作りの企画をしたんですが、クリスマスリースよりも、彼女がどういう生き方をしてきたか、そういう話をみんな聞きたがるんです。

不登校を経験した当事者が、ちょっと上の先輩に直接話が聞ける。“普通はこうでしょ”みたいなよくある道じゃなくて、いろんな生き方があっていいんだ、ってわかっていくと安心するんだと思います。

実際に働く中で自分の得意もわかる

――「ブリュッケ」の若者も、えんくるに関わっているそうですね。

「えんくる協力隊」っていうんです。

ブリュッケもまず「安心できる居場所」ということを大切にしているので、もちろん強制ではないのですが、三時間働くとお金もつく形で手伝いに来てくれて。ひきこもりがちだった若者がもう同じ人とは思えないくらい、ここですごく変わっていくんです。

えんくる食堂を手伝いに来てた子が食品メーカーに決まりましたとか、ホテルの接客係になりましたとか。正職員採用ではなくても、派遣やアルバイトで自立していく子が増えてきています。

「こども☆きっさ」の様子。小3から通っていた子たちも今や5年生。色々な年齢の子どもたちが各々好きなように過ごす居場所。

――社会に一歩出る前の、いい実践の場なんですね。

パントリーの整理や配送、食堂での調理の補助とか、いくつか仕事があるんですが、食堂はちょっと合わなかった子も、パントリーに来たらすごくよく動けることもあるんです。調理って好き嫌いがありますし、「自分は整理や事務処理のほうが得意だとわかりました」と言って、今は地元の幼稚園の事務を手伝っている子もいます。

だから得意を見つけるとか、自信を持って一歩踏み出してみるとか、そういうきっかけづくりの場でもあるんですよね。

えんくるでは「何かやってあげる」とか「やってもらう」とか一方的なものじゃなくて、ぐるりと回って“する側”も“される側”も一緒のイメージを持ってやっています。若者たちも一緒に地域に入っていって、自分たちができることで社会参画をする。地域の一員として生きる。そんな地域づくりを目指していきたいです。

川崎市子ども夢パークの運営も担っている認定NPO法人フリースペースたまりばが運営している。

コミュニティスペース「えんくる」
住 所:神奈川県川崎市多摩区宿河原6-25-24
問合せ:044-813-5248
・フードパントリー:毎週月・水・金・土
・えんくる食堂:月3回(要予約)
・えんくるCAFE:毎週月・水・金/第2土
・こども☆きっさ:毎週月・水・金

金子(A)

 

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不登校インタビュー事例集『雲の向こうはいつも青空』Vol.10

学校へ行かずにいると、将来どうなるの?
学校に行かなくてほんとうに大丈夫なの?

もちろん、そこに正解なんてありません。
世の中の多くのものごとと同じように。

でも、
いろんな例を見聞きし、知ることができれば、
不安を和らげるのに役立つのではないか。

そんな思いから
自らも息子の不登校を体験した親である
びーんずネットの二人が、不登校をテーマに
インタビュー事例集を作成しました。

不登校・ひきこもりを経験した人。
その保護者。
子どもたちに寄り添う人。
そして自分の学びを実践した人。

そんな七人七色の「雲と青空」を、
丹念に取材してまとめました。

雲を抜けた先には、
いつも青空が広がっている――。

ぜひ、ページを繰って、
あなた自身でそれを確かめてみてください。

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