思い通りにならないことも体験してほしい

地域でキラリ☆な人を取材!
びーんずメイトVol.30
自由な学び場HIRU-net代表 今田剛士さん

東京都武蔵野市にある少人数の自由な学び場
HIRU-net(ヒルネット)。
子どもたちの自主性と「体験」からの学びと
遊びを大切に、なるべく教室を出て
自然の中を探検し、焚き火を楽しみ、
知らない街を歩きます。

自らを「遊びと学びの”隊長”」と称する
代表の今田剛士さんに
お話しをうかがいました。

教室の目の前の井の頭公園で思い切り遊ぶ子どもたち

――ヒルネットの開校は2019年なんですね。今田さんが子どもの自由な学び場を立ち上げたきっかけを教えてください。

もともと僕は「V-net教育相談事務所」という、学びの場の教師なんです。塾といえば塾なんですけど、受験勉強を教えるより、学校ではみ出してるような子どもたちが個人レッスンに来るような、そういう場なんですね。そのVネットで「学校に行ってない」っていう子がどんどん増えてきて。

ちょうど自分の娘も「ちょっと学校に向いてないな」と思い始めたころで、個人レッスンの子どもたちの問題と自分の家庭の問題とが重なったんです。「じゃあ自分でフリースクールをやればいいのかな」と。

最初は2、3人から始めて、だんだん増えてきた感じです。小学4年生から高1まで今、全員合わせると20人ぐらいいます。 年上の子が下の子の面倒を見たり、年齢や個性、発達の凸凹具合もいいほうに働いている。本当に僕は何もしてないんですけど(笑)。

HIRU-net(ヒルネット)のみんなの「隊長」今田剛士さん

――午前中は学習の時間で、午後は散歩に行くスタイルは当初からですか?

実はもっと授業スタイルもやろうと思っていたんです。それこそ当時は「探求学習」が流行っていたので、教える気満々だったんですよね。

ただ当時、最初のメンバーだった子のお母さんから「取りあえず子どもが楽しくいられるのが一番なので、勉強とかはいいです」と言われて。「そ、そうですか?」みたいな(笑)。

ただ「散歩」はしようと思ってたんです。教室がそんなに広くないし、閉鎖的なのは嫌だなと思って。 午前中の過ごし方には変遷があるんですが、散歩に行って3時ぐらいに教室に帰ってくるという午後の過ごし方はずっと続けています。

面倒くさいものがくっついてくる

午前中の過ごし方も登室・帰宅時間も自由。「悪とは何か? 善とは何か?」などをテーマにみんなでディスカッションすることも。

今は学習にしても、他者とのコミュニケーションにしても、ある意味オンライン上だけでできちゃうんですよ。それに家にいれば快適に過ごせるじゃないですか? 夏は涼しいし冬でも暖かいし。

でも本来はそうじゃない。夏は死ぬほど暑いし、冬は寒いし、雨に濡れるのは不快なものだし。当然、外に行くと風邪もひく。

環境との関わりでいろいろ面倒くさいものがくっついてくるんですよね。他者との関わりもそうですし。でも実はその「面倒くさいもの」が大切だったりするので、それを一番体験して学んでほしいんですよ。思い通りにならないことがいっぱいある。天気なんかまさにそうですけどね。ヒルネットの子たちはすごい雨の日でも散歩に行くことがありますけど(笑)、でも思いっきりビショ濡れになったら意外と気持ちよかったりして。

解決するようなことじゃない

――生徒さん同士、とても仲が良さそうですね。みんなスッとなじむんですか?

いや、もう本当に様々ですね。

体験に来た翌週から来てすぐになじむ子もいるし、他者に慣れなくてずっと固まってるような子もいて。その子自身のタイミングがうまく合うか合わないかっていうことかなと思います。

大事なのは大人が焦らないことですよね。僕もですけど、すぐに大人は「次はこう、その次はこう」ってどうしても考えがちというか。大人は「解決できる」って思っちゃうんですよ。でも解決するようなことじゃないなと。

毎週木曜日はお出かけの日。自然の中での川遊びや街中でのフィールドワーク、子どもたちで火から起こす焚き火の会もある。

最近印象的だったのは、行政が主催のある会で話したとき、「成功例を教えてください」と言われて――しょうがないから「何々高校に行きました」とかね、言ったんですよ。

でも後で他のフリースクールの先生やスタッフの人たちと話して思ったんです。「別に高校に行ったからって成功じゃないよね」と。いや、むしろ心配ですよねと。

ヒルネットから学校に戻った子も何人かいるんです。でもそれはそれで心配なんですよ。学校に行ってずっとつまんなそうにしてるんだったら、それは成功じゃないよね? と思うんです。

解決しようとするのではなく、学校や塾、フリースクールが良い・悪いでもなく、その子にあった場所を――自然と水が流れていくように適正な場所、あるいは適正な人生が見つかるようにしていく。

――自然と水が流れるように。

そうやって見守るって本当に難しいし、僕も自分の娘や息子を見守れているのかどうかはわからないですけど、親も失敗しながら――失敗するのはしょうがない。みんな初めての体験ですからね。

「先頭切って歩いて行ったけど、行き止まりの“壁”だったなあ」とか。

実は僕はすごい方向音痴でして。お出かけで僕が先頭切って歩いてると「あ、ごめん、すごく遠回りしちゃってるわ」ってなることもあるんです。そんなときは「うん、これが人生なんだよ!」と言ってごまかしておりますが(笑)、でも実際人生ってそういうところもあるかなと思ってますね。

他のフリースクールとかけもちで来る子や、学校に通いながら来る子も。子どもたち本来の個性を大切に活動している。

自由な学び場HIRU-net(ヒルネット)
日 時:火曜〜金曜9:30〜15:30(登室・帰宅時間自由)
住 所:東京都武蔵野市御殿山1-5-5 3F  JR中央線吉祥寺駅徒歩5分 問合せ:090-1966-0960
hirunet01@gmail.com

金子(A)

 

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不登校インタビュー事例集『雲の向こうはいつも青空』Vol.9

学校へ行かずにいると、将来どうなるの?
学校に行かなくてほんとうに大丈夫なの?

もちろん、そこに正解なんてありません。
世の中の多くのものごとと同じように。

でも、
いろんな例を見聞きし、知ることができれば、
不安を和らげるのに役立つのではないか。

そんな思いから
自らも息子の不登校を体験した親である
びーんずネットの二人が、不登校をテーマに
インタビュー事例集を作成しました。

不登校・ひきこもりを経験した人。
その保護者。
子どもたちに寄り添う人。
そして自分の学びを実践した人。

そんな七人七色の「雲と青空」を、
丹念に取材してまとめました。

雲を抜けた先には、
いつも青空が広がっている――。

ぜひ、ページを繰って、
あなた自身でそれを確かめてみてください。

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